善福寺日乗

ある職業的散歩者の日記

2022-01-01から1年間の記事一覧

死出の山路

前回の投稿で宣言した「1980年代以降、日本社会に何が起こったのか、そしてこれから何が起ころうとしているかについての与太話」を披露すべく、これまで書き溜めてきたノートを読み返しはじめた8月30日の夜、発熱していることに気づきました。体温を計ると37…

斥候(ものみ)よ夜はなお長きや

教養学部の構内にあった学生寮で懶惰な留年生活を送っていた1974年のある日、ふたりの同級生と暮らしていた30畳ほどの部屋に、見知らぬ来客がありました。きけば30年ほど昔の住人とのことで、壁という壁を埋めつくす落書きを眺めまわしたあと、「さすがに残…

帰属家賃と消費者物価指数

今年1月に投稿した”福祉は住宅から始まる”でも紹介したエミン・ユルマズ(野村證券、複眼経済塾)の次のような一文を目にして以来、消費者物価指数と住宅価格の関係がずっと気になっていました。 『日本経済は長期にわたりデフレが続き、物価は上がらないとい…

王たちの憂鬱な夏

かつてPIMCOを率いて債券王の称号をほしいままにしたビル・グロースは昨年9月、『米国債はごみ』だと指摘しました。『米連邦準備理事会(FRB)の資産購入の減額(テーパリング)が2022年半ばにかけて進み、10年債利回りは今後1年で2%以上に上昇(価格は下落…

Hotel California を追われる日銀

2010年3月3日、ダラス連邦準備銀行の総裁だったRichard W. Fisherは、FRBの超緩和的な金融政策について、イーグルスのヒット曲”Hotel California”の歌詞 - You can check out any time you want. But you can never leave. - を引用して、バランスシートの膨…

二重構造論の復権

2021年12月27日、大企業などで構成される事業者団体や経済団体を集めた会議において、岸田首相が『成長と分配の好循環を実現するため、中小企業が適切に価格転嫁を行い、適正な利益を得られるよう環境整備を行う』と異例の要請をおこなったことが報じられま…

Bob Dylan’s Dream

誕生日にもらった友人からのメッセージで、大学に入学してから半世紀たったことに気づきました。 18歳からの5年間を大学で過ごしましたが、なかでも教養学部キャンパスの一角に建つ学生寮での2年間はかけがえのないもので、いまなお寄木張りの床にひかれてい…

福祉は住宅から始まる

この数ヶ月、1990年代以降の日本の長期的な衰退に関する論文や書籍、コラムなどを読み漁っていたのですが、その過程で住宅に関わる面白い論考をいくつか見つけました。 一つ目は、大阪大学社会経済研究所教授だったチャールズ・ユウジ・ホリオカ(大阪大学、…