1968年6月5日の夜、ぼくは新宿5丁目にあった新宿厚生年金会館大ホールにいました。そのころ絶大な人気を誇っていたPeter Paul & Maryのコンサートに行ったのです。オープニングのナンバーは、Bob Dylanがつくった"When The Ship Comes In”でした。
開演して1時間ほど経ったころ突然3人が舞台から消え、しばらくして沈痛な面持ちで現れたPeter Yarrowが、ロバート・ケネディが撃たれたこと、容態が絶望的であることを呟きました。
その数年後、NHKがロバート・ケネディに関するドキュメンタリーを放映しました。その中に、大統領予備選を戦っているロバートが、Observation carのデッキに立って演説するシーンがありました。そのバックに流れていたのがSimon & Garfunkel の"AMERICA"、All Come to Look for America(みんなアメリカを探しにきたんだ)という詞のリフレインで終わるあの歌です。
そんなわけでこの曲を聴くと、いつもその夜のことを思い出します。14歳でした。
藤原伊織の名作"テロリストのパラソル"は、主人公の島村が新宿5丁目にある陽の射さない部屋で目覚めるシーンからはじまります。彼の大ファンだったこともあって、この界隈を歩くたびに、島村が暮らしていたバー "吾兵衛"のモデルになりそうな店を探したものでした。
アップした写真は新宿厚生年金会館が閉鎖された2010年の2月、新宿5丁目に隣接する富久町で撮ったものですが、"吾兵衛"はこんな路地裏にあったのではないか、そんな思いに捉われながらシャッターを切りました。